派遣の社会保険はいつから加入できる?
派遣社員として働く場合、懸念点となるのが保険についてです。正社員の形態でないとはいえ、病気や事故といった思わぬリスクに備えて保険に加入することはとても重要です。派遣で働く人も、条件を満たすことで社会保険には加入できます。今回は社会保険にいつから加入できるか、その詳細や加入条件を詳しく紹介します。派遣として働く予定のある方、社会保険の制度について理解を深めたい方は参考にしてください。
もくじ
派遣の社会保険は雇用契約締結日から加入できる
社会保険への加入有無については、派遣や正社員といった雇用形態には関係なく、勤務期間や労働時間に応じて決められます。そのため、派遣であっても社会保険への加入は義務として定められており、基本的には雇用契約の締結日から加入可能です。
必要な手続きを進めることで、正社員と同じくすべての社会保険に加入できます。ただし、加入するにあたっては保険ごとにいくつかの条件が定められているため、これらの条件を満たさなければ加入を認められません。
社会保険への加入を希望する場合は、条件を満たす働き方となっているかを事前によく確認しておきましょう。
手続きは基本的に企業側が実施
社会保険に加入する手続きについては、基本的にすべて企業側が実施します。派遣社員はマイナンバー・通知カードのコピー、年金手帳か基礎番号通知書の原本またはコピー、雇用保険被保険者証の原本またはコピーを会社へ提出することで、派遣会社側が手続きを進めます。
また健康保険については、国民健康保険に加入している派遣社員が派遣会社の健康保険に加入する場合、国民健康保険の脱退手続きが必要です。住民票を置く市区町村の窓口や自治体のWebサイト等を確認の上、自身で手続きを進めましょう。
国民健康保険を脱退せず社会保険に加入すると、二重請求や医療費返還請求などの恐れもあるため要注意です。
派遣社員が社会保険に加入する条件
派遣社員が社会保険に加入するためには条件がありますが、保険ごとに詳細は異なります。それぞれの加入条件を紹介するため、社会保険加入時の参考にしてください。
健康保険
健康保険の加入条件は「1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満」「1ヶ月の賃金が88,000円以上」「2ヶ月超の雇用見込みがある」です。所定労働時間は契約上の労働時間であり、臨時の残業時間などは含まれない点には注意です。
また、契約上の所定労働時間が20時間未満であっても、実労働時間が2ヶ月を超えて20時間以上で今後も同様の状況が続く見込みならば、3ヶ月目から保険加入が認められます。健康保険に加入できない2ヶ月の期間は、国民健康保険に加入する、家族の扶養に入るなどで対処しましょう。
いずれの健康保険にも加入しない状態でいると、医療費が全額自己負担という大きなデメリットがあるため加入は必須です。それまでは国民健康保険に加入しておき、派遣の契約が更新されるタイミングで派遣会社の保険に切り替えるとよいでしょう。
雇用保険
雇用保険の加入条件は「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」です。失業手当などは雇用保険の加入によって支給されるようになるため、派遣社員にとっても雇用保険への加入はとても重要です。
保険料自体は派遣社員も加入時は支払う必要がありますが、雇用主にあたる派遣会社側の方が多くの金額を負担するため、派遣社員自身の負担は比較的軽くなります。条件を満たす派遣社員は会社側にとっても加入させる義務があるので、雇用の安定や就職促進に関するサポートを十分に受けたい方は条件を満たす働き方で派遣会社に勤めましょう。
厚生年金保険
厚生年金保険の加入条件は「2ヶ月超の雇用見込みがある」「契約上の1週間の労働時間が一般社員の4分の3以上」「契約上の1ヶ月の労働日数が一般社員の4分の3以上」です。保険料の半額は会社が負担する形となり、高齢児の老齢年金だけでなく、障害厚生年金・遺族厚生年金の支給も行うのが厚生年金保険の特徴です。
高齢者の老後はもちろん、障がいのある方や本人死亡時の遺族の生活を支えるための制度でもあるため、派遣社員でも厚生年金保険の加入は重要になります。厚生年金保険への加入は原則70歳までです。
労災保険
労災保険は雇用形態や労働時間等に関わらず、賃金を受け取る労働者すべてが加入条件を満たす保険です。仕事が原因の事故や災害が起きた場合に、会社が労働者に対して給付を行う制度になります。
保険料は全額が派遣会社側が支払う決まりで、派遣社員側での保険料負担はありません。働く人を保護するために加入が義務つけられる保険のため、雇用契約の発止時点で即座に適用されるのが労災保険の特徴です。
介護保険
介護保険の加入条件は「40歳以上65歳未満で健保組合や全国健康保険協会、市町村国保に加入している」「特定疾病により要介護(要支援)の状態である」です。介護保険は要介護者が少ない費用負担で介護サービスを受けられるための制度であり、保険料の半額は会社負担となります。
派遣社員の社会保険に関する注意点
派遣社員の社会保険加入に関しては、いくつか注意すべき点もあります。加入に関して後悔する形とならないよう、以下の点は事前に把握した上で手続きを進めてください。
派遣会社の社会保険制度をよく確認する
派遣会社の社会保険に加入する場合は、派遣先の会社ではなく派遣元の会社の制度をよく確認してください。派遣社員が加入できる社会保険は、所属先である派遣会社のものになります。
この時、派遣会社の規模によっては社会保険が十分に整備されていないケースもあり、働き始めてから不便で困ってしまうケースも考えられます。保険をはじめ派遣会社の福利厚生が充実しているのかはよく確認しておき、後悔しないようにしてください。
扶養内で働く場合は労働時間の調整が必要
家族の扶養内で働く場合には、社会保険の加入義務から除外されなければなりません。そのため、2ヶ月未満の短期の期間で契約する、1ヶ月の賃金が88,000円未満となる範囲で勤務するなど、労働時間の調整が必要です。
これら条件を満たす形で働くと不要からは外れてしまうため、注意してください。フルタイムで働きたい場合は加入条件を満たしてしまうため、社会保険への加入が必須となります。
社会保険に入らない選択肢もある
加入義務が生じる働き方をすれば派遣社員でも加入の対象になる社会保険ですが、入らない選択肢をとることも可能です。配偶者控除や扶養控除を受けたい、収入が少ないから給与の手取りを減らしたくないといった考えの場合には、加入条件を満たさない働き方で契約すれば社会保険には入らずに済みます。
しかし、将来的な保障や年金の受給額増加などのメリットを考慮すると、社会保険には加入しておいた方がよいケースも多いです。社会保険への加入は医療費の負担軽減や働く上での安心感も大きくなるため、仕事に対する満足度やモチベーション向上にもつながります。
自分が社会保険に加入すべきかどうか、あらゆる観点で冷静に判断してみましょう。
まとめ
派遣として働く場合の社会保険の加入時期や条件について、詳しく紹介しました。社会保険は、日常の思わぬトラブルやリスクに備えて、安心できる生活を送るためにも欠かせない制度です。正社員ではない派遣社員でも社会保険には加入できるため、しっかりとした制度を受けたい方は会社側とも相談しつつ加入を進めてください。その際、派遣先ではなく派遣元の会社の社会保険制度についてよく確認しておき、健康保険や厚生年金をはじめ、各保険の内容に関する認識の齟齬がないよう注意してください。場合によっては社会保険に入らない方がメリットに感じるケースもあるため、自身や家族の状況も踏まえた上で慎重に判断しましょう。